2016年7月4日

生きているうちに救済を

弁護士 小賀坂徹です。

 

被爆者援護法によって、広島・長崎の原爆被爆者が放射線の影響によって病気になった場合、

原爆症と認定され医療特別手当が支給されることが決まっています。

 

しかし、従来「原爆症」の認定基準は非常に厳しく、

被爆者が自分の病気は放射線の影響だと申請しても、ほとんどが却下されてきました。

 

この制度の改善を求めて、2003年から2004年にかけて全国の被爆者が集団提訴を行いました。

神奈川でも13人の原告が提訴し、私が弁護団事務局長を務めました。

 

集団訴訟のほとんどは被爆者が勝訴したものの、国は悉く控訴、上告を続けたため、

なかなか解決できないまま時間だけが過ぎました。

 

もともと原告の被爆者は高齢であり、しかも重篤な病気を抱えているため、

国が解決に背を向けている間に、多くの原告が亡くなりました。

 

裁判に勝っても、解決をみないまま亡くなっていった被爆者の無念を思うと胸が締めつけられました。

その後、漸く2008年3月に新基準(新しい審査の方針)が作られ、2013年12月にそれが確定しました。

 

新基準は前のものと比べると前進したものの、

爆心地からの距離や爆心地に入った時間、認定を受ける病気の範囲について不合理な線引きが残ったままで、

長年闘ってきた被爆者の希望を打ち砕くものでした。

 

こんな基準では、またまた被爆者は裁判を続けなければならない、国を訴え続けなければならないと思いましたが、

案の定、再び各地で原爆症の認定を求める裁判が起こっています(ノーモア被爆者訴訟)。

 

そのひとつの東京地裁の裁判について、谷口豊裁判長は2016年6月29日、

被爆した6人全員を原爆症と認める判決を言い渡しました。

 

この判決については、私の同期の弁護士のブログに詳しく書かれているので紹介します。

 

ノーモア・ヒバクシャ訴訟で画期的な判決、新認定基準から外れていても原爆症を認める。国は控訴するな!

(クリックすると別ウィンドウで開きます)

 

しかし、国は再び控訴する構えを崩していません。

国に控訴するなという声を集中しましょう。

高齢で病気を抱えた被爆者が国を相手の裁判を続けていくことは本当に困難が伴います。

 

被爆者がせめて生きているうちに何とか救済の手をさしのべて欲しい。

 

それが自らの身体を張って、私たちのために核兵器の被害を訴え続けてきた被爆者の皆さんに報いる道だと思います。